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前川属.悪魔(前川@ビバおりがみ)
原作者 前川淳

悪魔の完成形が見たい人はここをクリックしてください。
(このリンクは前川氏の承認を受けています)

特徴                  
折紙設計を代表する作品で、多くの創作家に 莫大な影響を与えた。顔、翼、尾など、全体
的なバランスの良さに注目したい。 造形上のポイントは。やはり指であろう。
この悪魔には指のないバージョンがあっ て、これもビバおりがみに収録されているが
それに指を付加した形がこの悪魔にあたる。 図1はその展開図である。さて、この展開図
を解析する前に、念頭においておきたいこと がある。それは、悪魔は用紙の使い方として
背中が割れているタイプだということである 。例えば、一値性を持った動物等を折ると、
背中に紙の割れめがくるが、悪魔ではこの割 れめが背中側にある。従って、手は背中側から
横に折りだされる形になる。これは、人物系 の作品を見るときのポイントのようなもので
ちなみに、 ミロク属.弥勒菩薩半跏思惟像(北條)では 逆に腹側に割れめがくる。
悪魔は、背割れ系で、手が後ろからきて、 更に有胴目なので、例えば、指のあるペガサ
スというようなものを一値性を強くして折れば 基本的に悪魔と同じような造形もできるはず
であるが、実際にはそれだけではうまくいか ない。それは腹側に折りだされるであろう内
部からのカドが悪魔では全て頭部の造形に 使えるように上部の同じ場所に集中している
からである。この内部のカドが全て頭部の造 形に使えるということも悪魔における重要な
ポイントである。従って、もし動物等を自由 折れるだけの技術を持った人が、悪魔の創作
を追体験し、その構造を確認したいならば、 一値性を意識しつつ、前足に指のある
ペガサスで、かつ、用紙中央線に沿って 出てくる内部からのカドを頭部に集中する
ように折れば、必然的に悪魔に近い<造形を 再現できることになる。
以上のことを念頭において、悪魔の解析を 試みる。


図1を横分子分解したものを図2に示す。ここで判明した円領域のうち、頭部の構成に関与
しているものをピンク色で染めたのが図3になる。用紙中央線に沿って頭部の円領域が
非常に深く用紙内部に入り込んでいることがわかる。


展開図を一値性で分解したものが図4である。悪魔には二値分子である第二次三角形が
ふんだんに使われているので、一値性での分解は細部までは行き届かない。とりあえず
分解できるところで分けたのが図5になる。


図5で分割された4片のうち、上にあるツルの分子団と下にあるツルの分子団は
おなじみのものであるから、解析の対象は中段の大きい2つの分子団となる。
これらは、左右対象であるから、右側のものだけを取り出して解析してみる。
それが図6である。これは同属の鬼や悪魔1との関連を考えると、鬼の第一凧型分子団が
悪魔1では下側の2個の直角二等辺三角形が融合し、それが悪魔では指の付加操作に
よってさらに発達したものと見なせる。この部分は二値分子が多いので、それを手がかり
に素直に分割したのが図7である。しかし、二値分子をそのまま考えるのは大変なので
ここでは、むしろ図6を二値分子に分解せずに、そのまま大きい一値分子として
考えてみたい。
その立場から円領域と帯領域を示したのが図8である。
とにかく悪魔の構造を理解したければ、この図8を折ってみることをおすすめする。
図8中央のカドは耳に対応するが、これと、翼のカドが鋭角でなく板状に出ることに
注意されたい。
さて図8に最下部の円領域とそれに接する帯領域は外部の分子との関係で2つに分かれ
ているが、この分子だけに注目すれば、一つの円領域としても全く問題はない。
結局、まとめると図6は図9の円領域を伴った一値分子として働いていることが
わかる。

私個人としては悪魔の面白さは、指の折り出し方はもちろんであるが、
さらに、図3の大胆な円領域配置と、図9の分子団が二値分子を用いてうまく
まとまっていることが大きいと思う。