記載は、このページのずっと下のほうにあります





















































シマトラ属.トラ(小松@『折紙探偵団新聞』44〜46号)
原作者 小松英夫




特徴                  
シマが特徴の作品である。その一方で
顔の造形も独特であり、展開図上からの解析
では、両特徴を成立させている構造の解明が
焦点となる。顔に関しては図2の横分子図を
見てもわかるように頭部と胴体との接続様式
だけに限れば「西川とら」とおなじであって
そこから先の造形が異なっている。従って頭
部だけに限れば「小松トラ」の頭部を「西川
とら」につけることもできるし「西川とら」
の頭部を「小松トラ」につけることもできる
(もっとも本当にそんなことをしたら、それ
は両氏に対して大変失礼なことなのだが。
頭部のみの構造の比較考察も興味深いが

それは、また稿を改めて考えて見たい)。
今度は全体的な形を見よう。
全体の大まかな形は用紙中央部に埋ま
っている正方形が決めており、これ自体は、
動物を折るときにはしばしば出てくる基本系
だが、問題は用紙周辺部でシマ模様を形成し
ているカド(見た目はカドと思いにくいかも
知れないが、技法的な扱い上は明らかにカド
の一形態である)と、用紙中央部の動物の基
本系とのバランスをどうやってとっているの
ということであるが、現状ではかなり難しい
問題である。それは足の円領域を青色の分子
で確保するのに対してシマのカドの領域を青
色の分子と赤色の分子の両方で確保している
からである。このような場合の合理的解釈は

今後の検討課題といえる。原作者の小松氏も
かなり苦心されたと思う。(特に首周辺は)
ここでは。筆者なりにわかる範囲で何とか考
えみたい。図3の縦分子図で等高線を引いて
その形をみたが、シマ模様を出すためのカド
との関係がなかなかつかめない。
おそらく通常の解析の縦分子系と横分子系の
役割を逆にすればよいとは思える。これは横
胴目(折紙分類の項参照)の場合のコツの
ようなものだ。
まず大まかに分析してみよう。
なにはともあれ、展開図そのものを図4とし
て掲載しておく。
最初に全体の展開図を、1個の頭―胴体部と
左右1個づつのシマ部と1個の尾部との
計4部分に分ける。
頭―胴体部に関しては下記の操作をする。
1、頭部の造形に必要な領域を1つの円領域
として表す。このとき、頭部と胴体との接続

様式が決まっているので直交する円領域を伴
わせて、折り方を規定しておく。
2、首の部分の帯領域も表示しておく。
3、他所との相互作用のない折線を灰色の線
で消しておく。
4、首付近のシマ用のカドの要求する円領域
も加えておく。

以上の操作で図5ができる。
図5を眺めると、尾部は充分に小さくなって
おり、折線も比較的単純で、折る時の制限
条件は境界部の赤線に一値性を持たせること
だけなので、これ以上は分解しなくても
折線の振る舞いは経験的に理解できる範囲で
あろう。また左右の各シマ部も、充分に小さ

くなっており、折線も経験的に処理できる範
囲で、折る時の制限も、境界部の赤線−青
線−赤線がコの字型をしていることなので
折線の振る舞いは経験的に理解可能であろう
(うーむ、経験、経験じゃ、解析になって
いないですね。あとからちゃんと解析し
たいと思います、特にシマ部は難しい)。
最終的に問題となるのは頭―胴体部の
部分なのである。そこでこの部分だけを図6
に示す。何度も言っているが、全体の構造を
決めているのは中央部の正方形なのである
(図6では緑色に塗ってある)。それにも
かかわらずその正方形で直接分割せずに周囲
の付加的部分(図6では黄色で塗ってある)
をつけたままで分割したのは、この分割線の

形の方が折れ曲がりの形態が単純だからであ
る。もしここで一値性を持つ自然な分割線が
あるなら、それで分割するのが一番簡単で
わかりやすい分割法になるのだが、それがな
い場合、二値性(この場合は0度と90度)の
分割線が次善のものになる。特に横胴目の
分割の場合は横帯を取り外して二値性の分割
線を一値性の分割線にしてしまう方法もある
(図7)今回は一応その方法をとっておく
ここで一値性で分解できるところは分解して
しまおう。同時に前足を長くする操作が入る
はずなので、その操作に対応する様に分子を
少し変更してみる。この図に前足の円領
域を青丸ではっきりと明示しよう(図8)。
だいぶわかりやすくなってきた。特に胴体部

は通常の一値分子にまで還元されたのであと
は自由な操作ができるであろう。ここで胴体
部の分析はひとまず区切りをつけ、いよいよ
最後に残った首の部分の解析に取り掛かる。
まずは、必要な部分だけ図示して(図9)、
どのような問題意識を持って、この部分が折
られるのかを明確にしておこう。
要するにこの部分での問題というのは、図9
に見られる青線系、赤線系の織り成す円領域
や帯領域を、その与えられた大きさを保持し
つつ、いかに青系と赤系の直交性を満たしな
がら、美しい折り線を完成させるかというこ
となのである。もっと具体的にいうと、この
展開図を折った場合に、縦方向のカドの
出方も横方向のカドの出方も同時にコントロ

ールしながら、いかに美しく折るかというこ
となのである。なお、青色の中心線付近の赤
の帯領域の位置は特に固定されてはいなく、
幅さえ確保されていれば、とりあず大丈夫
なはずである。
さて、この問題の解であるが、結論からいう
とこうすれば必ずうまくいく解決できるとい
う方法は現時点では知られていない。今後の
検討課題であると言った理由はここにある。
ここでは、無理に解答を求めてもしょうがな
いので小松氏本人の解答を鑑賞することにし
たい(図10)。鑑賞のポイントは青の帯領域
の、うねりぐあいである。図10の右下にその
様子がわかるように太線でその うねり方を
示した。
今後、このような事例が一つ一つ検討されて
いく過程で統一的な解決方法も確立されてく
るであろう。