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カミキリムシ属.ショウリョウバッタ(S太郎@S太郎の創作折紙)
原作者 S太郎 


特徴 
写実的な折り紙では、なぜかショウリョウバッタの作例はバッタの作例より少数のような気がする。
それは、実物を見てみると、普通のバッタのほうが人間的な顔をしているのに対して、
ショウリョウバッタは顔が細過ぎて、愛想がないような気がするからかもしれない。
しかし、S太郎氏のショウリョウバッタは実物の形を再現しているのに、なぜか独特の
愛嬌のある作品である。リアルな形を折りつつも、最終的には折り紙的な表現も重視する
創作方針のなせる技なのかもしれない。


図2は横分子図である(S太郎氏のページの円領域図とあわせてみてほしい)。
http://starou.omosiro.com/syouryouten.html
バッタであるので、なんといっても、、短い前足、中足と長い後足を折ることが重要な課題となる。
展開図を見てみると、前足中足の横分子と後足の横分子との径の比率は約
 1:1.61 
である。さらに腹部の長さと比較すると、(基本形段階で) 
腹部:前足:中足:後足=1:1:1:1.61
となる。意外と前、中足と後足の差がないような気もするが、これはS太郎氏が
強めに洗練化を行った結果である。この比率により、前、中足も腹部に対して十分な
長さが確保されることになったのである。
それにしても用紙内部の足(前足に相当)が、かなり用紙内部に入り込んでいるが、
これは注目すべき配置といえよう。通常の設計だと折りやすさを考えて、つい前足も
用紙辺部に配置したくなるものだが、そうした場合は用紙内部の余ったスペースを
収めるのに苦労してしまう。前足をどの位置に配置するかは、実際にはいろいろな可能性が
考えられるのだが、ここは用紙内部に大胆にはめ込んだ攻めの設計を十分に鑑賞したい
ところである。なお、前足を用紙内部に埋め込んだ結果として、前足が丈夫になり、
作品全体を支えるのに都合がよくなったことにも留意したい。
前足の上部には帯領域があって、さらに触覚が配置されている頭部へと続く。 この帯領域によって
長い首が確保されている。この設計図では帯領域は不等辺三角形のくみあわせによって発生している。
以上が、横分子(円領域図)のあらましであるが、この横分子配置はあくまで完成した
設計図の話である。一般に設計初期の段階では各円領域の径などがもっと任意で、
任意角性の強いものである場合が多い。
それを洗練化によって、角度の量子化(90/n度の倍角化する)や、対称性の高い
分子団(鶴の基本形分子団など)への置き換えがなさせるのである。
この洗練化は普通は縦分子で行われる。これは、横分子によって折カドの長さが定められ、
縦分子によって折カドの幅が定められることを考えれば、
角度の量子化等が問題になる洗練化の段階で縦分子が考慮されるのは自然なことであるからである。


このショウリョウバッタはハッキリとした洗練化がかけられている。この展開図に
示されている洗練化の様子を知るために、図3の縦分子図をみよう。
洗練化の目的は、造形を良くすることや、折りやすくすることである。講習会目的などの
特別な場合を除くと、通常は洗練化の主目的は造形の向上に向けられる(実際は両目的が
同時に達成されることも多いのだが)。
造形の向上させるためにはどこを洗練化すれば良いかといえば、当然、良く目に付くところを
中心に洗練化すればよいことになる。では折紙作品では、展開図上のどこが実際に
折られたときに目に付くのだろうかという話になる。これは、そのテーマ毎にケースバイケース
なのであるが、一般には昆虫では背中の部分、すなわち展開図中心線付近がもっとも
目に付く場所、すなわち洗練化の中心箇所となる(ちなみに哺乳類では横側面つまり
展開図周辺部が目立つ場所になる)。というわけで、図3で注目すべき場所は用紙対角線
であるところの中心線となるのである。図3を見ればすぐに気づくと思うのだが、
対角線上には2つの鶴の基本形と1つの半鶴の基本形がある。展開図中心線上の
残りの1ヶ所に任意三角分子が来ているが、この分子とて対角線となす角度は
90/8°の倍角に量子化されている。
このように本作品では用紙中心線上の洗練化が徹底されている。この洗練化によって、
折り上がり形は、複雑な形状であるにもかかわらず、スマートな表現が可能になっているのである。