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多風船属.トウジャンゴサウルス(川畑@空想おりがみ)
原作者 川畑文昭 



特徴                  
背中の刺が印象的な作品である。洗練された造型と高度な技術の共存が達成されて
おり、その完成度の高さで特筆すべきものである。同じ作者の作品にステゴサウルス
があるが、両者の折線構成はまったく別のものである。
トウジャンゴサウルスの基本的な展開図を図2に示す(解釈しやすくするために
本来の折線構成の意味をできるだけ保持しつつ一部変更してある)。これを見れば
わかるように折線構成は多風船属になっている。



一値分解したものを図3に示す。この多風船属というのは、独特の性質があって、
カドを折リ出す能力は高いが、扱いが難しい面がある。その理由は、多風船属では
展開図上に縦横の円領域がまったく同じ大きさで対等に分布していることに起因する
(この事情は、例えば、多ツル属が縦方向の円領域が大きくて横方向の円領域は
小さいために、実質上縦方向のカドにだけ注目すればよいことと比較してみると
よくわかると思う)。すなわち多風船属では縦横の両方向のカドを対等に折り出せる
のでカドの折りだしには有利なのだが、一方縦横のカドが同等なので、縦横の区別が
つけがたく、折リ方のパターンというか枝分かれの数も多く、折っているときに非常
に混乱しやすいのである。その中でうまく造型をまとめるというのは、大変困難な
ことなのであるが、この作品は、さまざまに実現しうる折りあがりのパターンの
中から、おそらくは最善であろうものを引き出ししている。
図4には、円領域を示した、4本の足は用紙内部から折りだされており、背中のカド
は用紙周辺部から折り出されている。しかし図4の円領域だけでは、カドの数が
ぜんぜん足りない。では残りのカドはどこからくるかというと図4の赤円に直交する
青円からくるのである(図5)。


図5の青円は展開図上に適当な折線を加えることによって赤円に変換できるのだが、
あえて青円のままで表示したほうが、多風船属のカドの出方をよく反映している
と思う。青円を加えるところが用紙内部にもっとあると思われるかも知れないが、
それらはカドとして使われないので対応する青円は図には示していない。
この作品では、尾を折り出すために展開図が拡大されたものと見ることができる。
その様子を図6に示す。図6では拡大されたとみなすことのできる部分を灰色で
塗ってある。図2から図5までの展開図で混乱した人は図6の展開図の白地の部分に
注目してこの作品は基本的な構成をつかんでほしい。